Ⅰ.細胞老化と組織老化
細胞老化 (Cellular Senescence) と組織老化 (Tissue Aging) は,どちらも加齢に伴う現象であるが,異なるレベルで生じる。細胞老化は,細胞が分裂を停止し本来の機能を失う現象であり,テロメアの短縮やDNA損傷などが原因で生じる1)。老化細胞は増殖能力を失い,IL (Interleukin)-6などの炎症性サイトカインなど,特定のタンパク質を過剰に分泌するようになり,これらをSASP (Senescence-associated secretory phenotype) と呼ぶ2)。SASPは炎症を引き起こしたり,周囲の細胞に影響を与えたりすることで,組織の機能低下を促進する。また,細胞が老化すると,SA-β-gal (senescence-associatedβ-galactosidase) の発現が増えることが知られる3) (図1)。
組織老化は,細胞老化の結果として,組織や臓器の機能が低下する現象である4) (図1)。皮膚のコラーゲンが減少してシワが増えたり,筋肉が衰えたり,免疫力が低下する現象も含む。組織老化は,加齢に伴う疾患 (生活習慣病,アルツハイマー病など) の発症や進行に密接に関与する。

Ⅱ.皮膚の組織幹細胞としての表皮幹細胞
皮膚や筋肉,神経などの組織には,それぞれ組織幹細胞が存在している。組織幹細胞とは,体のさまざまな組織に存在し,分裂して自分と同じ細胞を作り出す能力である 「自己複製能」 と,特定の細胞に分化する能力である 「分化能」 を併せ持つ細胞のことである。特に,表皮を作り出す幹細胞を表皮幹細胞と呼び,損傷した組織を修復することで,皮膚の再生や恒常性維持に重要な役割を果たしている5)。
組織,特に皮膚の老化には,この表皮幹細胞が密接に関与している。加齢や老化によって幹細胞の数が減少し,機能が低下する。幹細胞が減少すると,皮膚の老化や機能低下,再生能力の低下につながるなど,最終的には組織全体も老化してしまう。そのため,この細胞老化,特に表皮幹細胞の細胞老化を防ぐことが組織や個体の若返りのために重要であると考えられる5)。
Ⅲ.シリカ水とは
シリカ水は,二酸化ケイ素 (SiO2) というミネラルが含まれた水のことである。シリカは,人間の体内にも含まれるミネラルであり,人間の骨や関節,血管,細胞壁,皮膚,毛髪,歯,爪,筋肉など身体中に広く存在する。必要な栄養素を誘導して体の土台を作る役割があり,骨や血管,皮膚などの形成に大きく関与する健康的な毎日に欠かせない成分である。
この二酸化ケイ素が水と反応して得られる物質のことをケイ酸 (Si (OH)4など) と呼ぶが,このケイ酸モノマーから脱水縮合によりダイマー,オリゴマーが形成され,形成された球状粒子であるコロイダルシリカが水に分散したものをシリカ水と呼んでいる (図2)。シリカ水では,このコロイダルシリカが水に分散しているため,肉眼では白く濁って見える。シリカ水中では,コロイダルシリカとケイ酸が平衡状態にあると考えられる。ケイ酸には,抗酸化作用やストレス応答の緩和などさまざまな作用が報告されている6)。

Ⅳ.シリカ水が表皮幹細胞に及ぼす若返り作用
表皮幹細胞は,絶えず紫外線 (ultraviolet:UV) 刺激にさらされている。UV刺激によって細胞内活性酸素種 (Reactive oxygen species:ROS) が生じることで炎症が生じ,IL-6などのSASP産生も伴い,細胞は老化する。そこで,まずシリカ水によってUV刺激後の細胞内ROS産生,酸化ストレスがどのように変化するかについて実験を行った。
表皮幹細胞に対して,UVB 60 mJ照射後,miliQ (mQ) もしくはシリカ水を培養液に添加し2時間後の細胞内ROS産生を測定した。すると,UV刺激による表皮幹細胞の細胞内ROS産生は,mQと比較してシリカ水で減少した (図3a)。そのため,シリカ水はUV刺激後の表皮幹細胞内のROS産生を抑え,抗酸化作用を持つことが示唆された。
次に,UV刺激後の表皮幹細胞からのSASP産生として,IL-6産生に対するシリカ水の効果を調べた。表皮幹細胞にUVB 60 mJ照射後,mQもしくはシリカ水を培養液に添加し,4時間後の培養液中のIL-6濃度を測定した。すると,UV刺激による表皮幹細胞からのIL-6産生はシリカ水によって減少した (図3b)。そのため,UV刺激による表皮幹細胞の老化現象を抑制することが示唆された。
また,老化現象のより直接的な現象として,老化マーカーとしてβ-gal発現がシリカ水によってどのように変化するか検討を行った。表皮幹細胞にmQもしくはシリカ水を添加した培養液で14日間培養し,β-galの染色を行った。すると,シリカ水によってmQと比較してβ-galの発現が低下していた (図3c)。このことから,シリカ水は細胞の老化を抑制し,若返り効果を持つことが示唆された。
以上のことから,シリカ水は表皮幹細胞に作用し,細胞内ROS産生を抑制することで抗酸化作用を発揮し,SASPの産生を抑止し,細胞老化の進行を遅らせることで組織の若返りをもたらす可能性が示唆された。

Ⅴ.シリカ水が皮膚浸透性に及ぼす作用
このように,シリカ水は細胞老化を抑制し若返り効果を持つことが示唆されたが,組織全体に与える効果,特に皮膚浸透性に及ぼす効果は現在まで不明であった。皮膚浸透性は,シリカ水と一緒に含まれる成分やその他の成分が皮膚に及ぼす影響を評価する上で重要な指標となる。そのため下記では,表皮および真皮全層の3D培養を使用し,FITCの透過性の評価をmQおよびシリカ水を用いて行った。
mQを用いた群では,FITCは24時間経っても角層にとどまっており,表皮内や真皮内への浸透はみられなかった。一方で,シリカ水においては7時間後から24時間後にかけて,表皮内や真皮内へ浸透が増加していた。そのため,シリカ水はFITCの皮膚浸透性を向上させることが示唆された (図4)。

Ⅵ.シリカ水のもつ若返り効果と皮膚透過性亢進の作用機序
単なるシリカ水が若返り効果を持つとはにわかには信じがたいことではあるが,よくよく調べてみると,その理論的な根拠は意外と豊富であることがわかってきた。老化は酸化ストレスによって引き起こされるが,若返り効果の一つの重要な因子として抗酸化作用がある。細胞が持つ酸化ストレス消去系として,抗酸化酵素と抗酸化物質がある。前者は,スーパーオキシドジスムターゼ (Superoxide dismutase:SOD) やカタラーゼ,グルタチオンペルオキシダーゼがあり,後者にはグルタチオンやチオレドキシン,ビタミンC,ビタミンEがある7)。中でも,SODの補因子として重要な微量元素として,銅,亜鉛,マンガンがあるが,シリカ水がこれら微量元素のトランスポーターを増やすこと6),またこれら微量元素とケイ酸のco-transporterが存在すること8),およびシリカ水がSODなどの抗酸化物質を増やす6)ことでSODが活性化し,抗酸化作用が発揮され,若返り効果をもたらしたものと考えられた。
次は,シリカ水の持つ皮膚透過性亢進作用である。mQには基本的にH2O以外に成分は含まれないのに対し,シリカ水にはコロイダルシリカやケイ酸が含まれる。これらの分子が表皮細胞や表皮幹細胞などに作用することで,FITCの皮膚透過性が亢進したと考えられる。その一つの作用機序としてco-transporterの存在がある8)。Co-transporterとは,膜タンパク質の一つであり,電解質や有効成分イオン,ケイ酸などとともにFITCなどの分子を取り込み,膜を透過させるタンパク質のことである。シリカ水に含まれるコロイダルシリカやケイ酸によって,このco-transporterが活性化し,また数が増えることでFITCの皮膚透過性が亢進した可能性が考えられた8) (図5)。

まとめ
加齢や紫外線が刺激となって,酸化ストレスなどの細胞老化ストレスが引き起こされ,表皮幹細胞の老化マーカー上昇や老化関連分泌因子の産生促進を介して幹細胞は老化し,組織も老化していく (図1)。シリカ水は,そこに含まれるコロイダルシリカやケイ酸が作用することで,幹細胞の細胞老化を抑制し若返り効果をもたらすとともに,組織においても若返りおよび皮膚浸透性を向上させることが示唆された (図6)。シリカ水と聞くと,何か得体のしれないもののように感じるかもしれないが,さまざまな実験により,その中に含まれる有効成分が実際に若返りの効果を引き出し,皮膚透過性を向上させることが示唆されつつある。シリカ水は,若返り効果と皮膚浸透性の向上をもたらす大変興味深い成分の一つである。今回の作用機序の考察から,ミネラル水と併用することで,より高い若返り効果や皮膚透過性の向上につながる新たな可能性も示唆された。

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